学校
今から10年ほど前に某大学から「少女漫画家のゲストとして1~2回講義してくれませんか」という依頼がありました。その時は「大学でマンガ学科ってどういうこと?」と驚いたのですが、京都の大学にマンガ学部が出来たこともニュースになっていて「どんなことやってるんだろ?」と興味が湧いたのと、当時やっていた連載が一区切りついて、30年近い引きこもり生活も限界だったこともあって、私はノコノコとその大学へ出向いてしまったのでした。これが運命の分かれ道?でした。当時はマンガ学科の校舎も完成しておらず、プレハブの仮校舎にパソコンやマンガがぎっしり詰め込まれて、先生方も職員室のようにそこかしこでお仕事なさっていました。「マンガ喫茶?」「インターネットカフェ?」という言葉がグルグルと頭に浮かびボーっと氷の浮いたお茶を見つめながら担当の先生を待っていると、リュックにマンガをギッシリ入れて、両手にマンガぎっしりの紙袋を下げた汗だくのオタクぽい先生(すいません…)が「どうもどうも。●●先生のご紹で来てくださったよし先生ですよね?准教授の〇〇です。」と名刺をくださいました。なんとも人の好さそうな優しそうな先生でホッとしました。
私の大学時代には「准教授」という肩書はなく「助教授」という名称だったと思うのですが、助教、とか助手などと混同しやすいというので名称変更があったそうです。まあそんな話をしながら「とりあえず学生たちのマンガを指導してあげてほしい」との依頼を受け、本当にドキドキしながら教室に向かったのでした。
正直なところ「大学で勉強してプロの漫画家になれるなら苦労しないよなあ…」と冷ややかに考えていたのですが、学生たちの絵とネームのクオリティの高さに触れて本当にびっくりしました。
まずは当たり前だが今風!私の絵はもう化石だ!かなりのカルチャーショックを受けました。
これだけ若い絵柄に触れる機会は今までなかったので、思わず食い入るように見てしまいました。その上彼らは小さいころから特訓してきただけあって絵がうまい、そこはかとなく色気を感じる絵柄の人も多い(BL志望者が多かったせいもある)少年漫画も動きがあって、話は荒っぽかったり趣味に走りすぎてるけど、私が知ってる商業誌に載っている作品とは全く違う魅力を感じました。
本気でやってる子たちのレベルは違う!!!自分こそ甘い認識を反省させられましたよ。これが大げさではない証拠に、私がこの時に指導した数十名の中から、今ではミリオンセラーの売れっ子やアニメ化されて引っ張りだこの売れっ子、単行本をたくさん出してる子、そしてデビューだけでも15人は下らないはずなので、ファーストコンタクトだったこの代の学生さんたちの実力は本物だったのでしょう。
pixivで大ブレイクした「~マンガで棒に振る」作者もこの中の一人で、当時はあれを創作だとは思わなかった人が多かったので大騒ぎになっていました。魂のこもった力のある作品を描く人だと思います。
数年間はマンガを描きながら契約社員のような立場で学校に通っていましたが、5~6年前あたりから急に専任の先生が急逝されたりお辞めになったりが続き、その代理を務めているうちに数年前から正社員(専任)ということになってしまいました。引き受けたからにはちゃんとやらねば…と頑張ってはいるものの、フリーランス生活が長すぎて、いまだに組織というものに慣れません。しかし私のような者を頼ってくれる学生さんのために!!日々通勤地獄を乗り切っております。あとしばらくは頑張るつもりです。漫画家に戻る日は来るかな…(´;ω;`)誰か仕事ください。
2018年8月末記